未来へ守り伝えていく神山の文化のかたち

いつもの風景の中に文化財がある

文化財」と聞くと、少し遠い存在に感じるかもしれません。しかし、まちを見渡すと、石碑や寺社、樹木など、昔から受け継がれてきたものが多く残っています。その中には、長い歴史の中で生まれ、育まれ、守られてきた文化財が含まれていることに気づくはずです。まずは、身近なところからまちの歴史に触れてみませんか。

阿波人形芝居頭 一役頭(太公望) 撮影 / 生津 勝隆
大久保の乳イチョウ

中峯正八幡神社本殿(上分字中峯)

 創立年は不明だが、寛永19年(1642年)に再興された時の棟札(むなふだ)が残っている。現在の本殿は明治30年頃、大工・高橋永八によって建造された。
本殿に施された色鮮やかで躍動感のある彫刻がすばらしい。平成元年(1989年)に神山町指定文化財に指定された。

勝明洞門の碑(下分字松ノ本)

 下分・神 領の両地区にわたって、良く肥えた土地にするため、文政6 年(1823 年)に用水路の建設工事が行われた。困 難を極めたのが、勝明寺の岩山での洞門開削工事で、用水路の貫通を成し遂げた業績を後世に伝えるために碑が建てられた。

石風呂(阿野字代次)

 密閉された岩穴の中で火を焚いて熱くし、濡れたむしろを敷いて、石の熱気と湯気で体を温める蒸し風呂 。現 代のサウナのようなものとして利用された。昔、阿波藩の姫君が病気を癒やすため、この地に滞在して、石風呂を利用したと言い伝えられている。

新居水竹の詩碑(神領字中津)

 幕末の徳島藩を代表する儒学者であった新居水竹(すいちく)が、儒学者としても名高い岸 粟里(ぞくり)の還暦を祝って贈った詩を掘り込んだ石碑。当時の岸家は代々神領村の与頭庄屋を務めていた。水竹の次男・四郎が岸家の養子になっているなど、親交が深かった。

左右内の一本杉(下分字城川内)

 空に向かって燃え盛る炎のような枝ぶりで、圧倒的な存在感があるスギの巨木。推定樹齢は600年で、幹周7.62m、樹高約30m。弘法大師が焼山寺へ向かう途中に手植えをしたという伝説がある。昭和29年(1954年)に徳島県の天然記念物として指定された。

鬼籠野神社本殿・鬼籠野神社の杉木立(鬼籠野字東分)

 立派な春日造の本殿は、18世紀末頃に建立された。宝治2年(1248年)に神領の大粟神社の分霊を奉祀したと言われ、江戸時代には“中一宮大明神”と称した。深い緑が覆う杉木立は、町の天然記念物に指定されている。

峯長瀬の大ケヤキ(阿野字峯長瀬)

 小さな祠を祀る若宮神社の境内にそびえ立つケヤキの巨木。推定樹齢900年で、幹周10.17m、樹高約36mで県内最大級を誇り、天気が良ければ徳島市から見えることも。昭和51年(1976年)に県の天然記念物に指定された。新緑や秋の紅葉が美しい。

どんなふうに使われていたのかな?

昔の道具を知って、生活の知恵を学ぼう

 旧鬼籠野小学校内にある神山町郷土資料館には、町内で昔から使われてきた道具や衣装がたくさん展示されています。その中で、暮らしにまつわる道具をいくつかご紹介します。これは一体何をするための道具でしょうか?当時の人々の無駄のない暮らしや、自然を生かした知恵や技術に思いを馳せながら、クイズに答えてみよう。全問正解できたら、あなたは昔の道具博士です!

Q1「唐臼」(からうす)は、何をするための道具でしょう?

① サイコロを振って遊ぶ

② 精米する

③ 芋をすりつぶす

④ 粘土をやわらかくする

Q2「箱膳」は、家族の中で誰が使っていたでしょう?

① 一番年上の人

② 子ども

③ 女性のみ

④ 家族一人ひとり

Q3「鏝」(こて)は、何をするための道具でしょう?

① アイロンがけ

② 漆喰塗り

③ お好み焼き

④ 草抜き

Q4「行火」(あんか)は、何を使って温めていたでしょう?

① 電気

② ろうそくの火

③ 炭火

④ お湯

Q5「挽臼」(ひきうす)は、どんな材料を粉にしていたでしょう?

① ハーブ

② 米・麦・そばなどの穀物

③ 岩絵具のための鉱石

④ カカオ豆

Q6 この籠は、主に何のために使われていたでしょう?

① 犬や猫を入れて飼う

② 素顔を隠す

③ 野菜を保存する

④ お櫃(ひつ)を保温する

Q7この箱は、どんなふうに使われていたでしょう?

① 豆腐をつくる

② 写真を現像する

③ 大切な物を入れておく

④ 冷蔵庫

答え

Q1 ② 精米する
臼とつながれた長い柄を足で踏むことで、シーソーのように杵を上下させて、米や麦などを脱穀・精米するための農具。てこの原理を利用しているため、作業に力がいらず、女性や子どもでも簡単に使うことができました。これだけ大きなものはなかなか見られないので、とても貴重です。

Q2 ④ 家族一人ひとり
一人分の食器(茶碗・汁椀・小皿・箸など)を入れた箱型のお膳のこと。家族一人ひとりにそれぞれの箱膳が与えられ、各自が座る場所も決まっていたそうです。蓋を裏返すとお膳になり、食器を並べて食事をとることができます。食後は茶碗にお湯を注いですすぎ、飲み干してから箱に収納していました。

Q3 ① アイロンがけ
現在の電気アイロンに代わる道具。先の鉄の部分を火鉢などに直接差し込み、熱くしてから、布や衣類の上に押し当て、しわを伸ばします。着物の仕立てをするのに使われていました。温度調節機能がないため、当て布や霧吹きを使い、生地を傷めないように工夫していたようです。

Q4 ③ 炭火
布団や身体を温めるための暖房器具。受け皿の中に火起こしした炭を入れて、毛布でくるみます。寒い夜に布団の中に入れておくと温かくなり、よく眠ることができたそうです。持ち運びも簡単です。

Q5 ② 米・麦・そばなどの穀物
自分たちで種から育てた米や麦、そば、大豆などの穀物を挽いて粉にする臼。木の棒を持って上の臼を回転させ、穴から穀物を入れると、上下の臼が擦り合わさって、粒が小さく砕かれます。家庭に必ず一台はあって、挽いた粉で蕎麦を打ったり、自家製の豆腐や味噌をつくったりしていました。

Q6 ④ お櫃を保温する
釜で炊いた熱々のご飯をお櫃に移し替え、さらにお櫃のご飯が冷めないように、保温性と通気性に優れた藁で編んだ籠の中に入れていました。主にご飯が冷めやすい冬に使われた民具です。“櫃ふご”、“藁いずみ”とも呼ばれます。

Q7 ① 豆腐をつくる
豆腐箱という名のとおり、豆腐づくりに用いた木箱。挽いた大豆を煮てから絞り、絞った汁ににがりを加えたものを木箱に入れて落とし蓋をし、重り石をのせて水気を抜き、豆腐を固めます。底面には溝、側面には穴があり、水が抜けやすくなる工夫も。豆腐は特別な日のごちそうでした。

農村舞台に息づく神山の伝統文化

 かつて農民たちの娯楽として、神社の境内に建てられた舞台で人形浄瑠璃の芝居が上演され、たくさんの見物客で賑わっていました。ここ神山の小野さくら野舞台では今なお、人形座「寄井座」が公演を行い、舞台の背景である「襖絵」を楽しむことができます。

江戸時代から受け継ぐ人形浄瑠璃に親しもう

寄井座 座長 楠本 和敬 さん

 寄井座は、江戸末期の嘉永元年(1848年)に結成され、今年で178年となる人形浄瑠璃の一座です。「阿波人形浄瑠璃」は国指定の重要無形民俗文化財ですが、寄井座は
貴重な舞台衣装や頭(かしら)をたくさん所有しており、中でも明治から昭和にかけて活躍した人形師・初代天狗久が製作した頭14体は、県指定の有形民族文化財に認定されています。新しい座員を増やして、伝統を受け継ぎながら、地元の人たちに愛される舞台をこれからも演じていきたいと思います。

撮影 / 生津 勝隆
撮影 / 生津 勝隆

地域の芸能を大切に、まちに活気を取り戻す

小野さくら野舞台保存会 会長 岩丸 正史 さん

 小野さくら野舞台は、本小野にある天王神社の中にあります。貴重な文化財であり、地域に残る芸能として、小野地区だけでなく神山町にとっても大切に伝承していかなければなりません。毎年、境内にある山桜が満開になる季節に、この野舞台で阿波人形浄瑠璃や襖からくりなどの公演をしています。この素晴らしい農村舞台を誇りに思い、かつて地域の拠り所として親しまれた頃のように、再び子どもから大人までたくさんの人が集まる場所にしていきたいですね。

デジタルの力で未来へつなぐ

文化財保護審議委員 小松崎 剛 さん

 神山で語り継がれるお話によると、まだ神山が5つの村に分かれていた頃、襖絵は素人芝居や人形浄瑠璃の背景として隆盛を極めました。それぞれの村の野舞台や小屋掛
けで、農閑期の娯楽として長く親しまれていました。神山町に現存する1,500枚という圧倒的枚数の襖絵は、この地に民衆芸能の文化が色濃く残っている証と言えます。当時の人々の相当な熱量が、時代を駆け抜け、襖絵に宿り、代々残されてきたのかも知れません。襖絵の現物は、どうしても劣化や風化をしていきます。現在の姿をデジタル・データとして保存していくことで、この先、200年後ぐらいの神山町民や未知のどこかの人々へ、神山が誇る文化の一つとして伝わっていけたらおもしろいなと考えています。

暮らしの中に残る、まちの記憶

 文化財や昔の道具は、地域の歴史や暮らしを映し出す大切な手がかりです。身近にありながら普段は意識することの少ない“神山の歴史”に、改めて目を向けていただければと思います。今回の特集が、昔の暮らしに思いを寄せ、まちの文化財に親しみを感じていただける小さなきっかけとなれば幸いです。ぜひ一度足を運んで、文化財に触れてみてください。

かみやまchでは、「文化財保護審議委員さんと見るまちの文化財」を公開中です。
是非ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=dE8x87R75NE&t=2s

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