神山の歩むべき未来を照らす光

農業 地域で協力しながら食を守ってゆく

挑戦の先にあるおいしさを求めて

神山社中ファームサービスオフィス 代表 阿部 充典 さん

広報編集委員会撮影

お米を生産していく上で、獲れ高はもちろん大切ですが、昨年よりおいしい米ができているのかが楽しみでもあり、モチベーションにもなっています。毎年12月に開催されている「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」にお米を出品していますが、とにかくさまざまなことへの挑戦は続けていきたいです。お米を通して神山町のよさを全国に広めていきたいと思います。

黄金色に実った田んぼで、稲刈り作業が進む (町民の方より提供)

専業で野菜をつくる文化に新しい風が吹く

フードハブ・プロジェクト 共同代表取締役 農業長 白桃 薫 さん

広報編集委員会撮影

フードハブが10年目を迎えて、専業で野菜をつくる仲間が少しずつ増えてきました。目標は10経営体が集まること。農家数が減っている中で、山の中の神山の中では比較的広い場所を時間をかけて受け取りながら、荒らさないように守っていくことで、神山の農業の一部を担っていけたらいい。このまちには野菜の有機農産物の専業農家が元々いなかったけど、これから食としての暮らしが成り立つような、職業としての農業が見える時代になってくるだろうなと思います。

子どもたちに農業の魅力を伝える (広報編集委員会撮影)

すだちを次世代へと継承するために

すだち農家 佐々木 宗徳 さん

町民の方より提供

鬼籠野一ノ坂という小さいコミュニティでもすだち農家は多いので、地域単位で一緒に協力してやっていくことが大切です。おじいさんたちがこれまで育てて全国に名を残してきたすだちを、長い目で見て地道に続けていきたい。すだちの収穫量を減らさずに、売上を伸ばすことによって、みんながこの土地に定着すると思うんです。僕らの子どもや若い世代が増えれば、困り事があっても助け合うことができるし、その循環を広げていきたいですね。

まちの特産品であるすだちの収穫に励む (町民の方より提供)

林業・住まい 山からはじまる神山のまちづくり

その土地で育った木を使った家づくり

左右内製材 三辻 貴弘 さん

広報編集委員会撮影

気候にも合うし、長持ちするから、その土地で育った木で家を建てるのが一番だと思っています。神山で家を建てるのなら、神山で育った木がいい。山で切った木が直接届けられて、家の完成までの流れを知ることができるのは、木の家づくりをしたい方にとって分かりやすいですよね。一方で、山の上から見る景色はだんだん変わってきて、山水が少なくなってきたと感じます。林業として山の手入れをするにしても、バランスを見て木を残したり、新しく植えたり、急がず長期的に取り組むことが大切ですね。かつて神山で盛んだった製材業も今はだいぶ少なくなってきましたが、家業や技術を絶やさないように、僕らの次の世代へと受け継いでいきたいです。

林業、製材所、大工、設計士が一つのまちに

いけべ建築設計室 池辺 友香子 さん

町民の方より提供

大埜地の集合住宅に携わったことで、木の伐採からはじまり、製材所の人がどんな仕事をして、大工さんがどう加工するか、という一連の流れを学びました。毎年開催している「伐採・製材所見学ツアー」を続けることで、少しでも地元の木を使った住まいづくりが広がっていけばいい。それは林業や製材に携わる人たちだけでなく、実際にここで暮らす私たちの生活と密接に関わっているから。林業があって、製材所があって、大工さんがいて、設計士がいる、全てが町内で揃うのが神山の魅力ですね。個人的には、神山にあるそれぞれの地区の特徴ある風景や暮らしが長く続いていくことを願っています。

子育て世代が集まって暮らし、長く住み継がれてゆく大埜地の集合住宅(町民の方より提供)
林業体験で、伐採の迫力と森の大切さを学ぶ

観光 人とのつながりが神山らしさを形づくる

未来の宿のあり方と神山らしい風景とは

WEEK神山 代表取締役 神先 岳史 さん

広報編集委員会撮影

石積み修復や川づくりを通して、これからの風景を考えるようになりました。宿を中心に、周りの景観に手を入れることで、暮らし方がもっと良くなるし、ここに滞在した人がいろんな体験をすることで、神山の新しい価値を創造することになる。そして宿と地域との関係性がより深くなればいい。地域や組織の枠組みを越えて、ありたい自分像を持つ人たちが協力し、その関係を長く続けていくことが、神山らしい観光につながるのではと思います。

修復された石積み。美しい景観がよみがえる

「また来たい」と思える場所へ

四国山岳植物園岳人の森キャンプ場 山田 充 さん

広報編集委員会撮影

神山町は、よく他の目的地へと向かう通り道として使われることが多いと思っています。ただ通過されるだけではもったいない。滞在してもらって、地域経済を回してもらう。そのためには、引き留められる魅力が必要です。今僕にできることは、とにかく「岳人の森」を何回来ても魅力を感じられる場所にすること。そうすることで神山を訪れるきっかけの一つとなり、結果としてまちが盛り上がっていければと思っています。

渡し舟となって人と人をつなぐ

めし処 萬や 山びこ店主 谷 真宏 さん

広報編集委員会撮影

誰かと仲良くなりたいし、いろんな人をつなげたいんです。旅行で神山を訪れた人や外国人のお遍路さんとカウンター越しにおしゃべりして、親密になってゆく。お客さん同士で仲良くなることもあれば、偶然居合わせた地域の人との交流も生まれることもあります。僕がしているのは、一人でできる観光事業のようなこと。神山の人って地元のことがすごく好きだから、まちを盛り上げるために、個人でもできることがもっとあるのではと思います。

まちの自然に包まれながら歩むお遍路さん

伝統文化 楽しい文化のバトンを未来の子どもたちへ

伝統の傘踊りを次の世代へ

阿川傘踊り保存会会長 相原 利章 さん

広報編集委員会撮影

阿川地区の傘踊りは江戸時代後期に雨乞い祈願としてはじまったと伝わっており、約180年の歴史があります。コロナ期間もあり、数年間活動ができていなかったのですが、今回地区のみなさんの協力により、二之宮八幡神社で行われた秋祭りで6年ぶりに披露することができました。指導できる方も少なくなってはきていますが、来年以降も継続して活動し、次の世代につないでいくことで、阿川地区の大切な伝統である傘踊りを守っていきたいです。

阿川地区の伝統・傘踊りが6年ぶりに復活

神山の地域性をつなぎ、可視化する

寄井座ジュニア(写真左から) 糸井 恵理 さん 秋山 千草 さん

広報編集委員会撮影

糸井 伝統的な芸能って単体で存在しているのではなく、風土や食育、他の文化など、まち全体の地域性をつないでいくようなことだと思います。農村舞台って、地元で採れた旬の食材が入ったばら寿司を食べて、季節を感じながら楽しむものです。子どもたちの中で小さな種が育っていき、何十年後かに、誰かに話したくなる地元の文化として残っていけばいいですね。
秋山 子どもたちが人形浄瑠璃に触れる機会を続けたい、という想いから、鮎喰川コモンで練習に励んでいます。放課後に過ごす場で見聞きする人形や歌が、なんだか楽しそうっていう入り口だと近づきやすい。みんなが和気あいあいとやれる関係性の中で、“楽しい”がつながっていくといいなと思います。

寄井座ジュニアのメンバーに演技を指導

教育 神山ならではの学びが未来を生きる力になる

神山で育ち、世界に羽ばたく人たちへ

神山まるごと高専校長 五十棲 浩二 さん

神山まるごと高専事務局より提供

これから4年生や5年生が卒業に向けたプロジェクトに進む上で、神山が抱える課題にテクノロジーとデザインの力を活用して向き合おうとする学生がきっと出てきます。日本の地方が抱えている課題にいち早く神山から取り組んでいき、神山発の解決策が良い事例となって、日本全体の解決へと広がるようになると嬉しいですね。そのために大切なのは、このまちの方々ともっと深いところでつながっていくこと。卒業生の中には世界に羽ばたく人もいれば、起業して神山に残り、地域の方々に応援していただきながら、一緒に何かをやっていこうとする人が出てくる可能性もあります。みんなの心の片隅で、神山で学び育ったからこそ、縁があって活躍できているんだ、と思ってもらえたらと考えています。

真剣な表情で講義に臨む学生
町民のみなさんにむけておこなわれた報告会の様子

町民の学びの場があり続けることを願う

神山町成人大学学級長 原田 健義 さん

広報編集委員会撮影

歴史ある神山町成人大学講座は、半世紀以上も永続しており、当初の「神山の庚申さん」に始まり、まちの史跡、伝説。橋や道など多岐にわたり学級生が協力、調査し冊子にまとめ発刊してたとのこと誇りに思い、感謝にたえません。現在は、年10回、学級生の要望に沿ったかたちで、午前は、講師による座学・講義を、午後は、神社仏閣史跡などの現地研修にて学びを行っています。
今年度は、71名の学級生が在籍し、学びの一環である町外ならびに県外研修はとても好評で、学級生の学習意欲の高いことには感心されます。人生最終章まで学びそのもので、人の出会いを大切にしたく、これからも神山町が続く限り、社会教育の一環としての学びの場、そして出会いの場として、更に成人大学講座がますます発展されることを願っております。

現地研修で地域の史跡を訪れる
真剣に講義に耳を傾ける学級生たち

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